イタリアオペラの巨人、プッチーニとヴェルディの代表的なオペラを紹介します。


プッチーニのオペラ

ボエーム

オペラというと中世の王侯貴族の華やかな宮廷生活の場面を想像しがちですが、このオペラは名もない若い芸術家達(いわゆるボヘミアン)の日常を描いてそれを芸術にまで高めたプッチーニの傑作です。題名の「ボエーム」もボヘミアンからきています。

1830年頃、舞台はパリ。ボヘミアンと呼ばれる芸術家の卵たち、貧しいながらも陽気に共同生活をしています。詩人ロドルフォ一人原稿を書いているとそこへ、ロウソクの火をもらいに隣人のお針子ミミがやって来ます。ミミは戸口で鍵を落としてしまった上、風でロドルフォのロウソクも消えてしまいます。暗闇の中、手探りで鍵を探す二人の手がふれあい、二人は恋に落ちていきます。実はこの時鍵はロドルフォがすぐに見つけたのでした。ミミもそれを知っていたのです。後はいつものメロドラマ、ですがミミは一時ロドルフォと別れて金持ちのお妾さんになる、という筋書きになっています。貧しさと病苦(ミミは結核病み)からなのですが、ここは少し違和感があります。最後は、死を目前にしてミミはロドルフォのもとに戻り、ボヘミアンたちに看取られて死んでいきます。

物語の筋書きだけみると何ということのない悲恋物語ですが、そこに歌われる数々の美しい旋律は単なるメロドラマを超えた、人間性の本質に迫るものが感じられ感動します。このような何でもない市井の人々の日常を題材にしてここまで芸術性を高めたというのは、プッチーニの作曲家としての類まれな才能によるものでしょう。
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